半導体から出る熱を金属に伝え、熱による空気の対流を促進、放熱し、半導体の熱を下げる役割をする機構部品の一つ。
半導体は電気を流すと熱を帯びます。自らの熱によって半導体の性能低下、更には故障へつながる危険性があります。したがって、その熱を速やかに逃がし、半導体の熱を下げる必要があります。
ヒートシンクとの素材としては熱伝導性が良く、入手しやすいことから、銅とアルミニウムが主に使用されます。
銅は特に熱の伝わりが良い特徴がありますが、アルミニウムの方が安価で、重量が軽いため、アルミニウム製のヒートシンクを検討することが多いと思います。
アルミニウムの中にも材質の種類があり、A1100、A5052、A6063、などがあります。そのなかでもヒートシンクに使用されることが多いのが、A6063になります。
A6063は製造するときにアルミビレットを加熱後、圧力をかけて押し出して製造され、複雑な断面形状を作ることができます。
また、他のアルミニウムより熱伝導率が低いですが、鋳造の一つであるアルミダイカストも量産性、価格、加工性の良さから選択の一つです。最近では伝導率の高いダイカスト材料も出てきています。
金属そのものが持つ熱伝導率と、成形、加工の特徴、また要求される予算や生産数量より最適な材質が決まってきます。
半導体から出た熱をヒートシンクに伝熱し、さらにヒートシンクの熱を空気に伝熱するには表面積が多い方が有利になります。よって、おおきなサイズのものが高性能になります。また同じサイズの中でも、くし形のフィンや剣山のような形状を作り、出来るだけ表面積を多くすることにより平らな金属板よりも効果が高くなります。
しかしながら、現実には使用できる空間は限られており、全体の構造を小さくするためにも
むやみにおおきなヒートシンクを使うことが出来ません。
また、半導体の熱が金属中を伝わる能力にも限界があります。いくら大きいヒートシンクを使っても、効果が落ちていきます。
そのためにもなるべく小さくて性能が十分なヒートシンクを選択したいと考えます。
ファンの風を使うことが出来るのであれば、ヒートシンクはより小さく出来ますし、自然空冷では空気の対流が十分に起こらず、放熱性能が発揮できないフィンの間隔が狭いヒートシンクも検討できます。
風量が大きくなれば、放熱量も大きくなります。
ヒートシンクの性能を示す指標として、熱抵抗値【単位:℃/W】があります。熱抵抗値は以下の式で算出され、値が小さいほど高性能なヒートシンクと言えます。
表面積が大きいと熱抵抗値が小さくなります。抵抗が小さいということは熱が金属を伝わって空気中に放熱される量が多くなることを意味します。
実際にヒートシンクを選ぶ際に検討しなければならないのは半導体が許容される上限温度になります。
その半導体の上限温度と周囲の空気の温度との差を半導体の発熱量で割ると必要熱抵抗となります。
例えば 半導体が許容される上限温度が125℃で周囲温度が35℃の場合、その差(Δt)は90℃。半導体の発熱量が30Wであれば、ヒートシンクに求められる必要熱抵抗は
90℃÷30W=3℃/Wとなります。
熱抵抗3℃/Wのヒートシンクを使って、周囲温度が40℃ 半導体の発熱量が20Wの場合、1W当たり3℃上昇すると考えられるヒートシンクですので、20W×3℃=60℃上昇。よって周囲温度40℃+20W当たりの上昇60℃で、この半導体は100℃まで上昇すると考えられます。
同じ条件でヒートシンクの性能が2℃/Wのものを使用すると、40℃+20W×2℃=80℃まで上昇で抑えられると考えられます。
(*実際にはヒートシンクに表記されている性能には測定条件があります。話を簡単に説明するために、半導体のケース熱抵抗やヒートシンクと半導体ケース温度などの熱抵抗は無視しています。)
ヒートシンクの色に黒いものがありますが、表面処理に黒アルマイト処理をしています。アルマイト処理をすることによって表面が硬くなりキズが付きにくいなるメリットや、もともとアルミニウムはさびにくい金属ですが、よりさびにくくなるメリットがあります。それとファンの風を利用しない、自然空冷の時はアルマイトの被膜による放射率の向上が放熱性能の向上に寄与します。
アルマイトの色の違いで放熱性能に差は出ません。
以上ヒートシンクを具体的な検討する前に参考となればと考えます。