有り難いことに、弊社はここ数年、銀ろう付け技術がらみの新規加工相談を多く頂きます。
新規案件や、難しい加工については、決まって弊社No1の職人である工場長(70)に、皆相談していました。

先日、いつものように、工場長に私が新規の加工案件の相談をしにいったときに、初めてこんな言葉を貰いました。
「何でもかんでもすぐにおれのところにもってこないで、これからは専務を通してもってくるようにしないとだめだ」

「俺のところに相談にくりゃそりゃ何だって出来るよ。でも俺がいなくなったらどうするんだ、誰もできなくなっちゃうだろ」

「専務が相談してきたらやり方を教えてやるけど、これからはそうやっていかないと何も出来なくなるぞ」

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私は、的外れかもしれませんが「俺のところにもってくれば何だって出来るのは当たり前だ」という言葉を聞いて、まず感動してしまいました。このセリフをいう事が出来る(行動も伴って)人は一体この世にどれだけいるのだろうか、と思いました。

当然、圧倒的なゆるぎない自信からくる言葉だと思うのですが、それをきちんと裏付けする、長年の努力と多くの失敗と、
真摯に1つのことを突き詰めてきた経験がある人しか言えないような、重い言葉のような気がしました。

工場長は親戚で、私も小さい頃からとても可愛がって頂いている方なのですが、この時はその関係をも忘れて素直にプロのすごさというのを感じました。勿論、日々の仕事に対する姿勢や、難しい加工を次々とこなす姿を近くで見ているからこそ、言葉に説得力があったと思います。

それと同時に、はっと気付かされたこともありました。
私は、今後会社を経営していく上で一番に考えていることが「事業を継続していくこと」です。

しかし今のように、何でも出来る工場長の所に難しい案件や新規の仕事を集中させてしまうことで、
「工場長しか出来ない仕事」が増えていくだけになってしまいます。これは、事業を継続させていくための行動ではありません。

私が入社した時に、この流れを非常に強く感じ、危機感を抱いていたのですが、いつの間にか私も内部の流れに飲み込まれてしまっていました。
結局、工場長に相談に行けば絶対に「出来る」と言ってくれるし、他の方に相談したときに断られることから逃げていたのかもしれません。

本当に大切なことは、事業を継続させていくこと=お客様にとって価値ある技術力を提供し続けること だと思っているので
そのために私がしなければいけないことが何なのかを、今一度しっかりと考えさせられる良い機会となりました。

弊社は、今まで工場長にとても依存してきた所があると思っております。それは現社長の前の代から続いているかもしれません。

誤解を招くといけないので、はっきりと言っておきたいことがあるのですが、当然工場長以外の職人の方々の高い技術力もあって、今日の弊社があります。そこに関しては、お客様も喜んでおりますし、はっきりとさせておきたいと思います。ただ、工場長に対する依存度が高かった、ということです。

今後の事を考えると、今までのように工場長に依存する(難しい加工は工場長に任せよう)というレベルを、少しずつ減らしていくことが大事だと思っております。具体的には、工場長しか出来ない仕事を洗い出し、他の職人がどんどんトライできるような環境をつくることです。

また、新規案件などについても、工場長に確認するのは最後にし、まずは若手や中堅で「考える」ことを最優先にするようにします。
幸いなことに、工場長もまだまだ元気ですし、積極的に教育もしてくれております。現に、若手への技術継承は順調に進んでおります。

何でも出来る人に、全てを任せれば仕事は順調に回りますし、楽に進むことは確かです。
しかし、会社として考えると、それはリスクでもある、ということに改めて気づきました。

何気ない仕事中の会話からでも、大切な気づきや勉強になることが沢山あるんだなと思いました。
また、この仕事がさらに好きになりましたし、その魅力をどんどん伝えていけたらなと思います。S__10141735  S__2514963

この記事を書いた人

佐藤 修哉
1986年生まれ
慶応義塾大学理工学部電子工学部を卒業後、大学院に進学
卒業後IT企業を経て、祖父が創業した佐藤製作所に入社