「イエスマン」はごめんなさい

写真:ベテランと若手が協力してドアオープナーを発送してくれています。

ここ5年程、毎年のように新卒で新入社員を迎え入れていますが、研修マニュアルや教科書は一切ありません。
毎年、入社する新人とコミュニケーションを取りながら、どのように進めるかをその場で考えて決めていきます。

また、新人研修については、私が全責任を持って1:1(去年は1:2)で毎日数時間かけて行っています。
これは、これからの会社の経営についてや、仕事に対する姿勢、考え方を私と共有する為です。

この方法について良し悪しと意見が分かれるとは思いますが、私は佐藤製作所で行う研修にとってはベストだと思っています。
その理由は、トップの考えを直接新人に教えられるから、というシンプルなもので、中小企業でないと出来ない方法だと思います。

トップの考え、ビジョンを入社段階から共有出来ていれば、会社の舵を切ろうと思った時に勢いよく皆で切ることができます。
これはこれからの社会を生き抜く会社になる為には、絶対必要条件だと思います。理由は、変化が激しいので。
昔の常識は一瞬で非常識になりますから、沢山舵を切る事になるでしょう。なので言ってることが違う!ということも多々あるでしょう(理解してくださーい)

毎日の自分の時間を数時間削ってでもここに投資する理由としては、何度か前述していると思いますが
人材育成・教育、社員の成長こそが会社経営にとって最も重要な要素だと私が確信しているから、です。

数か月に渡って継続する理由は、頭がいい意味で空っぽで素直な新入社員(中途社員の場合はこのやり方は難しい)にとって
最初の数か月のインプットが死ぬほど重要だと考えているからです。

私が言う「インプット」というのは、知識や一般常識やマナーではなく、「物事に対する考え方」です。
誤解されないようにしたいのですが、自分の思うように動くイエスマンを大量に作るということでは全くありません。

「物事に対する考え方」とは、「柔軟性」「スピード感」「常識や経験に囚われない」「自分で考える」「感謝する」などといった、
人間としてこれからの時代を生き抜く為に私が必要不可欠だと感じる要素です。

なので、テキストを読むとかは一切なく、会社で日々起きた実体験をベースにしてそれを深堀していくことがメインになります。
繰り返しますが、業界知識や業界常識、一般常識一般教養などといったことは私は教えていません(教えられません笑)

ただし、「考え方」「物事の見方」についてはかなり細かく、深く、しつこく、キャッチボールを繰り返します。
佐藤製作所の若いメンバーは、基本私に質問をしてきません。なぜでしょうか?

答えは、私が必ず「〇〇はどうおもう?どうしたらいいと思う?」と返すことが分かっているからです。
だから自分で考えるしかない。逃げ道がない。ということですね。

でも、はっきり言って私も正解何て分からないのだから、至極当然の返答だとは思います。
これも常々言っていますが、会社は学校ではないし、上司は先生ではないし、ビジネスで正解の回答なんて、ないのです。

ベテランに質問をすると親切心から事細かく教えてくれることが多いようなのですが、そこについては私からベテランに、
有難いことですがこれこれこういう理由で自分で考えさせるようにしているのでなるべく回答を言わないようにお願いします、と言っています。

これも何回も繰り返し伝えていますが、若い社員を採用し続けている理由は、会社にとって足りない部分を助ける「新たな力」となってほしいからです。
だから、今までの社員の代役でもないし、私のイエスマンでもないし、誰かのコピーでもないし、同じような歯車の一つでもないのです。

気分を害す方がいるかもしれませんが、私の中で激しく重要な考えの一つなのではっきりと言っておきたい所です。

今までは(特に工場の採用)誰かがいなくなったからそれの穴埋め、の繰り返しで、抜けて、入れて、を中途採用で繰り返していました。
求人票にも決まった仕事が出来る人限定で募集をかけ、極論それしかやらないという内容で契約を交わします。
だから、いなくなったらまた募集をかければいい。しかしそれを繰り返すと、同じ事しか出来ない会社・人になってしまう。

しかしこれからは、昔のように決まった仕事が大量に「き続ける」ということは100%無いので、その方針だと会社は潰れます。
だから、日々変わる社会のニーズにあった仕事を見つけ、それを行う為に必要な今の会社には無い力を持った(これから作ろうとする)人が必要。

誤解を生まないように補足すると、何でも感でも新しいことをやればいい、古い考えや人はいらない、ということでは全くなくて、
今までやってきた先人の考え方や技術、ノウハウを最大限活用して、今の時代に合ったサービスに改良していく、ということです。
ここ、ずれてしまうと会社潰れます。今まで数十年培ってきたものを大切にして、それを活かした新サービスやプロダクトを生み出すということを忘れてはいけません。

その時に必要なのは、佐藤製作所の今までやってきたことをただコピーする人ではなくて、佐藤製作所という土台が持っている資産(技術・人・モノ)を使い
ニーズにあった仕事を自分で創造できる力であり、それを自分で考えて行動に移せる力である、というのが私の考えです。

繰り返しますが、私や社員のコピーは必要ないです。もっと言えば、私なんかより良いアイデアを沢山だしてもらいたい、どんどん意見してもらいたい。
はっきり言って、絶対私よりも良いアイデアや意見を出せる社員、沢山います。既に。言わないだけで。自信を持って発言出来る環境を会社が作らないとだめです。
今誰かが出来ていることをそのまま同じように出来るようになる必要はそこまで無い、それよりもオリジナル性を磨いてほしい。

そして今日も若手社員に言いましたが、何かやってみたい、これはおかしい、こうしたほうがいいのではないか、と思う意見が出たら私は基本食い気味でGOを出します。
正解が分からないからまずやってみよう、です。間違ったらやめる、それだけのこと。

他の経営陣やベテランが例え苦い顔をしてストップをかけても、そこは私が強引にGOサインを出しますので、皆さんはそのつもりでいてください。
やるまえからNOを出すことは、しません。なぜなら、今まで自分がそれで苦しい思いを沢山してきたから。

NOを出すと、次から考えがあってももう言わなくなります。理由は、ダメと言われることが分かっているから。
それは成長させることをストップさせて、モチベーションを下げて、失望に繋がります。絶対に私はしません。

あと強く主張したいことがもう一つあって、意見が出て、GOをかけて任せたら、結果が出るまでは横から口出ししない!ということです。
特に問題なのが、途中のプロセスの一部だけをみて文句や否定をすることで、これは本当にやめましょう。グッとこらえてください。

前回書きましたが、その失敗リスクくらい抱えて、自分の会社の若い社員を上司が信じないでどうするんだ
と大きな声で言いたいくらいです(これは私の問題。家族経営の悩み。。)

因みについ先日も、私の直属ではない社員に対して、その上司(ベテラン)が仕事を割り振りしていたのですが、
やはりその仕事のとある1部分だけの指示で、かつそれはもうその人がいつも繰り返しやっている仕事でした。

弊社の仕事は、一つの製品を作る中で沢山の工程を踏みます。工程A、B、C、D…と沢山ある中の一つだけを専任で行う、というのが昔からのやり方。
これからのやりかたはそれだとダメで(理由は上記に)、出来る事ならば一人で製品を完結出来る能力が必要になってきます。

というか、中小企業だからこそ、これが出来るのです。大企業だと、仕事の全ての流れを見ることはできません、部署を異動したり制約が多いと思います。
中小企業で仕事をするメリット、やりがい、の一つは間違いなくこれ。仕事全体を理解できること。さらに言えば、お客様とのコミュニケーションも行い、作る事も出来る、が最強かと思います。

話を戻すと、昔風の仕事の依頼の仕方はかなり危険で、部下がそのAならAという仕事「しか」出来ない人間に育てるやり方になっています。
それは、お互いにとって不幸な育て方になってしまうと思います。この理由は根深いものなので別で書きたいと思います。

そして私が考えるのは、「なぜここまでして新しいことを若手にやらせることに対して、拒絶するのか」ということですが、
おそらく理由は簡単で、「出来ないと思っている」だと思います。失敗したときに結局自分がやらないといけないから2度手間だと。
違う、と言われても、おそらく根っこにはこれがあるはずです。これは若手を成長させたくない、と思っているのと同じだと思います。

私の考えは真逆で「絶対出来る」(ようになる)としか思っていません。さらに言えば、今できている人も最初は出来ていないわけだし、
いまやっている社内常識のやり方が必ずしもベストな方法だ、なんて思ったこともありません。これは自分の考えや仕事のやり方に対しても同様です。

長年やってきている先輩方のその考えを解くのは容易ではない、だけれどもそのまま教育していくと若手に対して申し訳ない、という想いが交錯し、
結果若手に対してこっそり1:1で考えをみっちり伝えていくことがベストだと、今は結論付けています。(おそらくもっといい方法があるので、今のベスト)

先輩や上司、教育担当者にとって、唯一の成果は何かと言えば、「部下が成長したかどうか」だけだと思います。
だから、同じことをやっているだけの人を配下についけている上司は、結果を出していない、という事になると思います。

「いい人」と「いい上司」を混ぜてはいけないと思います。当然人間的に好まれる人、いい人だと言われる人であることは最高に素敵ですが、
いい人だけでは上司としては役不足で、部下を持つ上司であれば部下を沢山成長させた人が(自分より優秀にするのが理想)「いい上司」だと思います。

やれることが増えれば、自信もでるし、お客様との交渉も前向きにできるし、社内でも信頼され相談されるし、仕事が楽しくなる。
逆に、出来ることを制限され、まだ早いとチャンスを与えられない環境にいる人は、その逆になり、厳しい言い方をすれば上司が悪いです。(と自分にも言い聞かせています)

・・・とはいえ、佐藤製作所は昔と比べると考えられない程風通しは良くなっていると思います(今更感が。。。笑)
ベテランも若手も、前向きに、協力し合って、仕事をしていると感じます。今年はさらにもうワンステップ、皆で上がりたいですね。

結論としては、入社希望頂いている方々、若いメンバー、インターン生も含め、
「イエスマンはいりませんよ!」ということでした。

自分の人生だから、自分で考えて動こうね、という事を分かってもらえたら有難いです。
会社は自分の人生を充実させるための道具、のように思っていいと思いますよ!どう使えば良い人生になるだろうか、と。

その会社には自分の人生が良くなる要素がある、と思ったところに入社しましょう!

この記事を書いた人

佐藤 修哉

1986年生まれ
学芸大学で生まれ育ち、鷹番小学校から中学受験で慶応普通部に
慶応義塾大学理工学部電子工学部を卒業後、大学院に進学
卒業後IT企業を経て2014年に祖父が創業した佐藤製作所に入社
若手社員とのコミュニケーションと2人の息子の世話に励む

東京商工会議所 事業承継対策委員
東京都労働産業局女性従業員のキャリアアップコンサルタント
https://www.josei-jinzai.metro.tokyo.lg.jp/program-introduction/instructor-introduction/shuuya-sato/